「2024年VIVAテクノロジー(VIVA TECHNOLOGY 2024)」でイーロンマスクが語った未来とは
「2024年VIVAテクノロジー」にJapanパビリオン初出展
2024年5月22日~25日、世界最大級のテックイベント「2024年VIVAテクノロジー(VIVA TECHNOLOGY 2024)」ががパリにて開催された。今回は特別招待国として、Japanパビリオンを出展することとなった。フランスは、政府の主導の下、スタートアップ振興政策であるフレンチ・テックを開始して10年が経過。この間、多くの企業を巻き込みながらオープンイノベーションを推進し、多くのユニコーン企業を輩出してきた。その象徴であるVIVA TECHNOLOGYは、過去にモビリティ・エレクトロニクス・ゲーム等の分野で一世を風靡したイノベーションの先駆者として、また、世界共通の社会課題を多く抱える国として、日本がこれら諸問題の解決に資するディープテックの技術力や新たなビジネスモデルを生み出す力を世界に示す絶好の機会と言える。さらに、世界各国の企業との商談や交流を通じて、新たなビジネスチャンスを生み出すとともに、日本のエコシステムのさらなる発展を促すことを目指す。
イーロンマスクが「2024年VIVAテクノロジー」に登壇
昨年は、フランスのマクロン大統領やテスラCEOのイーロン・マスク氏らが登壇し、現地参加とオンラインを合わせた参加人数は過去最高となる約15万人を記録するなど盛り上がりを見せた。VIVA TECHNOLOGY 2024の特徴は、大企業が自社と関係するスタートアップ企業を紹介する展示やピッチコンテストを実施するなど、オープンイノベーションをテーマに特化したイベントであること。フランスを代表する大企業であるLVMHグループをはじめとする大企業がスタートアップと共に取り組む社会課題解決事業について大々的な展示をする。日本では実現が困難だとされているのオープンイノベーションが海外では常識的になされ、しかも社会実装まで至っていると言う。その中心に大手企業ではなくスタートアップや投資家が存在していることも日本と異なるポイントだ。今回も前回に続き、イーロンマスクが登壇することが決定。本日、セッションが行われるので見逃せない。
「2024年VIVAテクノロジー」でイーロンマスクが語った未来とは
イーロンマスクは「2024年VIVAテクノロジー(VIVA TECHNOLOGY 2024)」にリモート参加し、未来についてのディストピア的なビジョンについて下記のように語った。
「最もよいシナリオとしては、人間はもう誰も仕事をしなくてもよくなるということ。しかし、このシナリオでは、ユニバーサルベーシックインカム(UBI)ではなくて、ユニバーサルハイインカムが必要になる。ユニバーサルベーシックインカムとは、全ての個人を対象に、キャッシュを無条件に支給する制度であり、 誰もが一定の経済的な保障により自由と安全を得られるようにすることを目指す。モノやサービスの不足は起こらないと考えている。最も可能性の高いシナリオとしては、ロボットにサポートしてもらえる豊かな人生を人類が送る未来である。しかし、お金や仕事に頼らなくていい未来では、人間が目的を失うという実存的な問題についてはコンピューターとロボットが私たちよりすべてのことをもっと上手にこなせるなら、私たちの人生に意義があるのか。未来の最も素晴らしいシナリオで起こる本当の問題は人生の意義の喪失だと言える。現時点では人間の職が奪われており、短期的な現実としては、AIは低所得から中所得層の雇用を脅かす存在として見られている。AIが人間と同じくらいの仕事ができるというわけではないが、一部の経営者はAIに経営管理までこなしてもらおうと試みているのも事実。例えばDuolingoは、翻訳業務をAIにシフトさせる際に複数の翻訳者を解雇したと報じられている。またNvidiaは、1時間にわずか9ドルしかコストがかからないAI看護師を開発する企業と協力している。現在のところはユニバーサルハイインカムどころか、こういった人たちを支援する社会的セーフティネットさえほとんどないのが現状であるが、人間がAIシステムに意味を与えることで意味を創り出すかもしれないと考えている」と指摘している。つまり、私たち人間の脳の働きを考えてみると、本能と感情の辺縁系と思考と計画を司る大脳皮質がある。しかし、大脳皮質は常に辺縁系を喜ばせようとしている。だから、もしかするとAIと人間の関係もそうなるかもしれない。AIは私たち人間の大脳皮質を喜ばせようとする。そして大脳皮質は辺縁系を喜ばせようとする。もしかすると、私たちがこうやってAIに意味や目的を与えるのかもしれないと考える。この最も可能性の高いシナリオは、スコットランドのSF作家イアン・バンクスによる『カルチャー』シリーズに基づいていた考えである。この作品では、ヒューマノイドの種族と人工知能エージェントが調和の取れた社会を形成し、「欠乏のない」経済を築いている。」
日本のロールモデルはヨーロッパにあることが最大の気づき
日本のオープンイノベーションの模範的存在は米国だと考えている人が多い。考えているというより、日本人は米国を模倣することを遺伝子レベルでインプットされているかのように米国の後追いをする。しかし、オープンイノベーションにおいて米国が必ずしもロールモデルになるとは限らない。むしろフランスなどのヨーロッパ都市のオープンイノベーションから学ぶべきポイントは多い。なぜなら、米国のオープンマインドと日本のそれは基準値が異なる。米国の多様性と日本のそれとは雲泥の差だ。また、米国の方が日本よりも規模の経済性が働きやすい。GAFAを支えるのは米国内で標準化されたものが世界に波及した結果に他ならない。それらの点においてフランスは日本と同じような国民性を持つ国が多く、国家の規模も近しい。LVMHジャパンにてITデジタルディレクターを務めるトマ・プリュネル氏にLVMHのオープンイノベーションの取組みやVivaTechの魅力について伺ったが、日本がオープンイノベーションを成功したら、現在のパリのような状況になるのだろうと感じた。また、VivaTechの主催者である、VIVA Technology Managing DirectorのFrancois BITOUZET氏、ヨーロッパのオープンイノベーションの潮流について語ったが、現在進行形でオープンイノベーションが進んでおり、今後が楽しみだ。日本企業は欧州のオープンイノベーションに学び、世界のオープンイノベーションの先駆者を目指したいところだ。
「2024年VIVAテクノロジー」は成功したのか
「2024年VIVAテクノロジー(VIVA TECHNOLOGY 2024)」は大きな来場者数記録と大きな社会的インパクトトを残した。昨年によりも来場者数が10%増加しただけでなく、ソーシャル ネットワークを通じて 20 億人以上の人々にリーチしているというから驚きだ。下記は運営者が発表したプレスリリースである。
VivaTech のもう 1 つの記録的なエディション:
– 165,000 人以上の訪問者 (2023 年と比較して 10% 増加)
– スタートアップ 13,500 社 (2023 年比 +20%)
– VivaTech は AI に関する世界的な議論の触媒として機能します: ソーシャル ネットワークを通じて 20 億人以上の人々にリーチ (2023 年の 2 倍)