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サステナビリティ経営における企業のあり方

サステナビリティ経営における企業の課題

形式的な企業の対話

このグラフは一般社団法人生命保険協会による「資本市場の活性化」「持続可能な社会に向けた取り組み」についての調査結果であるが、企業にとってのステークホルダーである投資家が対話をする上での課題認識を示したもので、投資家が青色、企業がオレンジ色である。投資家の課題認識は「企業は形式的にしか対話をせず、表層的にしか自社を理解していない」ということである。投資家と企業との認識の違いが対話に支障をきたしているということを表している。それにも関わらず、企業の3分の1が課題認識は特にないという結果はいかに企業が投資家との認識にギャップが生じているかを表している。

出典:一般社団法人生命保険協会「資本市場の活性化」「持続可能な社会に向けた取り組み」について

現実直視不足

なぜ、そのような状態に陥っているのかを考えていこう、企業は外部との接点がわずかで、せいぜい取引先やサプライヤーとの形式的なやりとりで終始している。このような状況下で次第に自社視点が強くなる。裏を返せば客観性を失い、偏った価値基準で物事を判断するようになる。これは企業内の閉じこもった時間がながければ長いほど重度となる。そこで厄介なのが「現状を認めようとしない心理」が生まれるということ。人間は恐れの感情を持つことを嫌う傾向があり、自社が脅かされるような要素は直視しないようにすることで恐怖を退け、安心しようとする。これを「現実直視不足」と呼んでいる。ここには近年注目されている心理的安全性はない。心理的安全性を確保した上で現実直視をすることから始めよう。

サステナビリティ経営における企業の在り方

コア・コンピタンス明確化

このようにステークホルダーにとって企業は形式的にしか対話をせず、表層的にしか自社を理解していなかった。そこあった要因は偏った認識、そこには現状を認めようとしない心理が働いていた。組織的な観点での解決策は後述するとして、まず事業の観点での解決策を示そう。

自社の理解はどのように行うべきなのだろうか。まずはSCP理論を理解いただきたい。これは企業の経営をする上で最も重要な基礎知識であり、ここを出発点に「5Forces Analysis」へと進めると有効な戦略策定につながる。3C、SWOTといったフレームワークはWhatに対して応えるが、Whyに対しては応えてくれない。経営理論であるSCP理論は自社が何故このような状態であるのかを深く理解させてくれる。完全競争の市場と完全独占の市場の間で企業は競争と共創を強いられている存在である。ここに競争優位性というものを考える必要性が浮かび上がってくる。そして、その競争優位性を捉えるコア・コンピタンスの明確化が最も重要なポイントとなる。

心理的安全性

組織的には、心理的安全性の確保が重点となる。Googleが「効果的なチーム」とは何かを定義し、その効果性をデータを収集して測定したところチームの効果性が高いチームに固有の 下記の5 つの力学のうち、圧倒的に重要なのが心理的安全性であることがわかった。結果によると、心理的安全性の高いチームのメンバーは、Google からの離職率が低く、他のチームメンバーが発案した多様なアイデアをうまく利用することができ、収益性が高く、「効果的に働く」とマネージャーから評価される機会が 2 倍多いという特徴があった。「チームの中でミスをしても、それを理由に非難されることはない」という状態がなければ現実を直視し対話を開始することができない。このことから企業の従業員が投資家と経営者から非難される心理状態である限り、サステナビリティ経営は達成できないと言えよう。

  • 心理的安全性 – 「チームの中でミスをしても、それを理由に非難されることはない」と思えるか。
  • 相互信頼 – 「チームメンバーは、一度引き受けた仕事は最後までやりきってくれる」と思えるか。
  • 構造と明確さ – 「チームには、有効な意思決定プロセスがある」と思えるか。
  • 仕事の意味 – 「チームのためにしている仕事は、自分自身にとっても意義がある」と思えるか。
  • インパクト – 「チームの成果が組織の目標達成にどう貢献するかを理解している」か。

まとめ

心理的安全性の確保とコア・コンピタンスの明確化の具体的な方法論は今後のコンテンツで順次配信していくが、今回のコンテンツでサステナビリティ経営における企業の課題と、その在り方についてはご理解いただけたと思う。そこには極めて人間的な心理が弊害となり、それを解決できるのは極めて論理的な経営理論なのだ。この事業と組織の両側面でサステナビリティ経営を行っていく姿こそ、サステナビリティ経営の企業の在り方と言えよう。

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