サステナビリティ経営の意味
サステナビリティ経営への誤解
サステナビリティ経営とは、環境・社会・経済の持続可能性を高め、企業の持続可能性の向上を図る経営戦略のことである。サステナビリティ = 環境という誤まった認識の広がりから、サステナビリティ経営は環境に特化した経営戦略を示すかのように誤解されてきた。また、各企業でサステナビリティ経営、パーパス経営、CSV経営、人的資本経営といった〇〇経営という表現が乱立したため、何が上位概念なのかわからないといった混乱がみられた。サステナビリティ経営は単なる方針ではなく、競争優位性を確保するための経営戦略である。ゆえに経営理論に基づき、その在り方、課題、解決策を定義づけていかなければ、ますます混乱するだろう。CSRとどのように異なるのかという声もよく聞かれる。従来、企業はCSRという社会貢献活動を実施してきたが、経営とは切り離された慈善活動の域を出なかった。しかし、世界が2030年のSDGs達成を目指す今、企業を持続させるにはサステナビリティの観点を経営に取り込む必要があるとの認識が浸透しつつある。
社会的な要請
経済産業省の動向
企業を取り巻く外部環境が急速に変化し、投資家をはじめとするステークホルダーのサステナビリティに関する課題への関心が益々高まる中、サステナビリティへの対応は、従来の慈善活動とは全く異なる次元のものとして、経営の根幹に位置付けられるべきものとなってきており、経営の前提条件が変わってきたと言える。 経済産業省では、2022年に企業のサステナビリティと社会のサステナビリティを同期化させ、持続的な企業価値向上に向けた経営・事業変革を行っていくことを「サステナビリティトランフォーメーション(SX)」と名付けられ、その重要性を提唱された。サステナビリティ経営を実現するためには、従来の経営課題以外にも多様なステークホルダーが持つ社会課題を解決するための知見や取り組み姿勢を持たなければならない。
従来の経営と何が違うのか
従来はSCRにとどまっていた活動を価値を創出する事業に進化させることなるが、これは一度変わったら元の姿に戻ることができない不可逆的なものである。ゆえにサステナビリティ・トランスフォーメーションと呼ばれている。そして全社的な経営変革となるため、事業部や管理部といった一部の取り組みではなくなる。もちろん環境推進部やサステナビリティ委員会のみの活動でもない。そして、従来の経営ではあまり馴染みのなかった投資的な観点が介入してくる。これはサステナビリティ経営においてステークホルダーとの対話が重要視されており、そのひとつが投資家であるからだ。人的資本経営がサステナビリティ経営に内包しているのは、ステークホルダーに従業員が入っていること、投資家が資本の投資を人材に投下している企業を評価していることが理由である。社会課題はリスクだけではなく機会でもあるということを前提に「知の探索」と呼ばれる事業開発が要点となってくる。これはチャールズ・A・オライリー教授の「両利きの経営」に詳しい。イノベーションで既存事業をつつ(深化)、従来とは異なるケイパビリティが求むめられる新規事業を開拓し(探索)、変化に適応する両利きの経営のコンセプトや実践のポイントを解説しており、サステナビリティ経営におけるイノベーション創出についての入門書と言えるだろう。
サステナビリティ経営の要点
コア・コンピタンスの追求
サステナビリティ経営においては、企業が顧客だけでなく、すべてのステークホルダーにとって価値提供をすることを目指す。では、その価値提供の源泉はどこか、競争優位性は何かという問いに答えを導き出さなければならない。そして、どのような道筋で価値を創造し、提供するのかを明確に打ち出し、それを核とした企業活動を形成することが重要となる。これを可視化したのが価値創造モデルである。
逆算での経営戦略策定
短期的な経営は「失われた30年」という負の遺産を生んだと多くの経営学者が分析している。これは経営者の短絡的な経営判断の連続が生んだとも言い換えられる。サステナビリティ経営においては、それが許されない。長期的なあるべき姿として長期ビジョンを描き、現状の企業活動とのギャップを逆算で策定する。いわゆるバックキャスティングという手法を用いながら、不確定な未来に対して何を目指すのか明確に示す必要がある。それを基にステークホルダーと対話を重ね、必要に応じて柔軟に見直す仕組みをつくり、レジリエンスを高めることが重要である。
エコシステム型への転換
ステークホルダーの要望に沿ったIR発から、各ステークホルダーとの企業とが共存するエコシステムの形成するような発想に切り替える必要がある。ステークホルダーのと対話で挙がった論点は経営に反映し、森が生物の生態系をつくるかのように社会、環境、経済における生態系を形成していくことに努めていく必要がある。
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