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オープンイノベーションとは

オープンイノベーションの意味

「オープンイノベーション」とは、企業間の垣根を越えてナレッジやテクノロジーを共有し、イノベーション手法のひとつである。これは2003年にハーバードビジネススクールのヘンリー・チェスブロウ博士が自著で提唱した概念であるが、オープンイノベーションを理解するにはイノベーションの理解が必要だ。ヨーゼフ・シュンペーターが提唱した「イノベーション理論」によると、イノベーションとは「価値の創出方法を変革して、その領域に革命をもたらすこと」を指す。そして変革の段階では「新結合(ニューコンビネーション)」が起きるという。このイノベーションと、イノベーター、投資家の3つが経済発展の重要な要素となるというのがシュンペーターの主張だ。ちなみにここでいうイノベーションは間違っても技術革新ではなく、社会に新たな価値をもたらすものを指す。

オープンイノベーションの背景


政府機関であるNEDOが公表した「オープンイノベーション白書」から、産学の連携不足が我が国のイノベーション創出の弱点となっていることが指摘されている。また文部科学省・経済産業省は、欧米企業に比べ日本企業は課題解決の段階で大学や公的研究機関をパートナーとして考えていないことや「企業の総研究費に対する大学への研究費の拠出割合が諸外国に比べ少ないことなどを指摘している。その解決に産学官連携による共同研究強化のためのガイドラインを策定している。国が発行する「日本再興戦略」(2013年)のなかでも、オープンイノベーションの積極的な活用を推進することが提言され、以降の成長戦略でもその考えは引き継がれている。ヘンリー・チェスブロウ、カリフォルニア大学バークレー校ハース経営大学院は“Conversations first, then relationships, then transactions”の中で「知識の分配は、中央の研究開発施設の高い塔から、 周囲に分散した多様な知識のプールへと移行しています。企業は、顧客、サプライヤー、大学、国立研究所、コンソーシアム、コンサルタント、さらには新興企業から重要な知識を見つけることができる。企業は、これらの分散プールを活用できるように自らを構築する必要がある。」としている。

出典:Henry Chesbrough, Haas School of Business, UC Berkeley.“Conversations first, then relationships, then transactions.”Roland Harwood, 100% Open.

オープンイノベーションのガイドライン

文部科学省は「産学官連携による共同研究強化のためのガイドライン」を定めており、その中で「日本を取り巻くイノベーションの環境変化に対応するには、企業と大学・国立研究開発法人が連携するオープンイノベーションの推進が重要」としている。そして、「大学は、官民だけでは対応できない社会的課題を解決に導く知のエキスパートとして、社会的価値を創造していく必要であり、これまでの産学官連携での共同研究は極めて小規模であり、「組織」対「組織」の体制の本格的な共同研究が不可欠。大規模な共同研究のKFSを踏まえた大学・国立研究開発法人側のマネジメントに大きな期待を寄せている」としている。

  • 資金の好循環
  • 知の好循環
  • 人材の好循環

これらの考え方、要素、観点はヨーゼフ・シュンペーターが提唱した「イノベーション理論」とのずれはない。

但し、文部科学省はこのガイドラインを実効性確保のプロセスから急に主体性と具体性を失っている。その内容は以下である。とりわけ、「大学・国立研究開発法人と企業との産学官連携を通じたオープンイノベーションへの期待が高い中で、一企業の防衛的な知的財産活用方策が我が国イノベーション全体に寄与しているのか十分に検討する必要がある」ならば、具体的な知的財産権の活用方法をガイドラインに明示しなければならない。さらには、「将来の共同研究等に繋がる大学・国立研究開発法人の単独特許のための費用に、企業等との共同研究における戦略的産学連携経費から措置することも効果的であると考えられる」という効果性に触れるだけで実用性の確保に触れていない。これではガイドラインの提示の意味がない。このようなガイドラインの活用を求めている状況では、大学・国立研究開発法人側も困惑する方も多い。下記がガイドラインの一部を抜粋したものである。

① 大学・国立研究開発法人の本部機能の強化について
・ 産業界は、大学・国立研究開発法人との間では、積極的に組織的な提案・コミュニケーションを行い、相互での使命、戦略や今後の見通し、ニーズ・スキルの共有・理解を深める。
・ 産業界は、大学・国立研究開発法人が設ける共創の場において、教育・研究・事業化に向けた取組を一体的に行う深化した産学官連携システムの構築に貢献する。
② 資金の好循環について
・ 大学・国立研究開発法人の現状も踏まえつつ、「組織」対「組織」の共同研究の契約を進めることを前提に、産業界は、そのために必要な直接経費や間接経費等(人件費(人件費相当額含む)や今後の産学官連携活動の発展に必要な将来への投資やリスクマネジメントとしての戦略的産学連携経費を含む)を適切に措置していく。
・ 大学においては、共同研究に携わる学生の人件費等について、個別の共同研究の契約に基づき経費を措置するなど優秀な大学院生の成長をサポートする。
③知の好循環について
・ 共同研究等の成果である共有特許権は、企業から防衛的な位置付けで用いられることも多いが、大学・国立研究開発法人と企業との産学官連携を通じたオープンイノベーションへの期待が高い中で、一企業の防衛的な知的財産活用方策が我が国イノベーション全体に寄与しているのか十分に検討する必要がある。企業側も、共同研究等の成果であっても大学・国立研究開発法人の単独特許とすること、共有特許であっても第三者に実施許諾可能とすること等、特許権を積極的な活用に結びつけていく方策を検討することが重要である。さらに、将来の共同研究等に繋がる大学・国立研究開発法人の単独特許のための費用に、企業等との共同研究における戦略的産学連携経費から措置することも効果的であると考えられる。
④人材の好循環について
・ 産業界においてもクロスアポイントメント制度を積極的に活用し、産業界と大学・国立研究開発法人間の人材の流動性向上を図ることで、「本格的な共同研究」の創出に繋げる。
⑤産学官連携の推進について
・ 「組織」対「組織」の共同研究を行うにあたっては、企業経営層が大型の共同研究について直接コミットを行う。
・ 協調領域の拡大や未来産業形成に向けた長期的視点で、拠点化への貢献と地域未来に向けた産学官連携を検討する。

出典:文部科学省は「産学官連携による共同研究強化のためのガイドライン」

オープンイノベーションのプログラム

私たち日本オープンイノベーション協会は文部科学省に代わって、オープンイノベーションの定義から、その活用方法、実現可能な状態に至るプログラムを提供する。このような支援活動により日本の競争力を高めること、それにより持続的な社会を構築することが私たちの使命である。

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