日本企業の醜態
短期的ではなく短絡的な経営
米国が基礎研究を行った内容を基に日本が大量生産するというのが昭和日本の産業構造であった。その中で求められていたのはミスをしないオペレーショナルな人材。特に製造業では上司に言われたことをその通り行うだけのオペレーショナルな人材をとしてきた歴史がある。しかし、大量生産の担い手の座は中国や東南アジアに奪われ、日本の産業にはイノベーションを生み出す人材が必要となった。もっと言えば日本に新たな産業自体を生み出す人材が必要ということが分かってきた。製造業は海外勢に圧倒され、不調であった頃の米国の状況が想起されるほど、日本の経済は脆弱化した。当時の米国と現在の日本の共通項は「ショートターミズム」という、いわば短期主義。経営者は任期が5年以下と短く、任期中にリスクをとらず、現状維持を目指す。株主や債権者もそれを許容し、その結果、脆弱化する。米国は早々に方針を切り替え、GAFAのようなリスクをとって投資を回し、新たなイノベーションの基盤を構築してきた。例えば、イーロンマスク氏のテスラは赤字であったが、それでも企業価値は高く保ちながら、新たな領域に果敢に展開を図り、投資額を拡大してきた。日本は対照的に、莫大な内部留保が安心材料となって挑戦しない経営がなされていると言えよう。米国は失敗から学習し、成功を手にしたが、日本は学習することはせず、失敗している状況を変えることができていない。臆病なまま動けないまま私腹を肥やすように内部留保を続けた日本企業とリーンに動ける勇敢な米国企業の姿は対照的。短期的というより、もはや短絡的な経営を続ける企業にGAFAのようなイノベーションは生まれないようだ。
経営者に必要な経営理論
この日本企業の臆病さの根源には経営リテラシーの低さに対するコンプレックスがあるのだろう。徹底的に経営理論を学んだことがある人には答えを導く力が備わる。そこには理論の根拠とロジックがあるので、それを可視化し、説明することもできる。しかし、日本企業の経営者が経営理論に基づく英断はできるかどうかは財務指標が示している通り。まずは経営理論を基にハンズオンで自社への理解を深め、経営戦略を考える。トレンドに敏感になり、時としてリスクをとり、独自のナレッジを持つ。そんなリーンな行動から経営リテラシーを高める。そのようなリーンな企業体質の下に新たなイノベーションが生まれてくるものである。
長期ビジョンがもたらす気づき
日本企業で起こる問題はすべてはこの短期的な明確な目標すら持たないことに帰結する。予測が困難な時代には、よりその傾向は強くなる。バックキャスティングで現在を捉え、長期的なビジョンを持つと経営のあり方が浮き彫りにしている企業がどれほどあるのだろうか。混沌を単純化し、抽象化するといった経営の思考は必ず、飛躍した気づきによって前進する。その気づきの連続が経営を進化させるのだ。既存事業の延長線上ではいけないという危機感があるからこそ、リスクをとる必要性に気づける。日本企業には、世界を見渡し、未来を見据え、勇敢に戦う姿勢をみせてほしい。
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