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イノベーティブ人材を生み出す成功要因

はじめに:

多くの企業内にはイノベーティブな人材が埋もれてるいるという。これは、製造メーカなどのオペレーティブな組織においても例外ではない。このコンテンツではイノベーティブ人材という突出した人材をどのように守り、どのように向き合い、増やしていくかについて紹介する。

第1章:イノベーティブ人材を取り巻く環境

企業に貢献する優秀な人材を探し出し、評価し、組織にとどめることは、長きに渡っての経営の重要なテーマであった。特に人材の流動化が進み、それが企業にとって人材の流出を意味していることに気づかされた現在、「イノベーティブ人材についての研究」の名の下に、企業に所属する卓越した社員を対象とした研究がなされている。

その中で、いくつかのことが分かってきた。

  • イノベーティブ人材は決して一部の企業ではなく、多くの企業で観察されること
  • イノベーティブ人材に全体の業績を大きく左右するほどの影響力を与えていること
  • イノベーティブ人材の影響がマイナスの影響を持つこともあるということ

ひとつめのデータはイノベーティブ人材が不在なのではなく、存在に気づいていないという指摘でもある。人材開発部門が公募制度などで発掘しようと躍起になっても彼らは応募するとは限らない。彼らはイノベーティブであるがゆえに社内政治の強そうな取り組みに背を向けている可能性が高いからだ。ふたつめのイノベーティブ人材の影響力は計り知れない。ロールモデルとして機能すれば、模範となって多くの従業員のマインドを変化させ、企業を活性化させる。逆にイノベーティブ人材が社内起業などで挑戦し、失敗したときに評価されないというような事態になれば、従業員は挑戦に対して消極的になる。同じ轍を踏まないように慎重になるからだ。

大手企業のイノベーティブ人材として活躍した経験を持つ人物に話を聞くと、公募に応募する際は周囲に反対され、社内起業が成功したにも関わらず、失敗のレッテルを貼られ、最終的は「由々しき人物の行動は看過できない」として、企業と個人の対立構造の中で戦いを強いられたという。それは彼の修羅場経験として活きていて、イノベーティブ人材をより強化したとも言える。ともすれば、こういう事態に陥った状況下で下を向いてしまう人材が多い中で「酷評こそ評価なり」と感じて前を向けるのはイノベーティブ人材の証なのかもしれない。

第2章:イノベーティブ人材を生み出すメカニズム

研究結果データの中で、とりわけミステリーなのがイノベーティブ人材が生み出されるのメカニズムである。そこには少なからず条件が存在する。その条件は下記の3点を掛け合わせる方程式で示せる。

  • 本人が顕著な成果を複数回あげること
  • 企業がそうした成果を組織全体に波及させること
  • イノベーティブ人材の脱線に対処すること

ひとつめ、イノベーティブ人材として注目されている人材は、組織の中で顕著な成果を複数回あげている。例えば、新規事業の成功、プロジェクトを危機から救うということなどが挙げられる。イノベーティブ人材は必ず、キャリアの早期に顕著な成果をあげているのであれば、顕著な成果をあげる方法論が必要だろう。それは、「適切な経験」「経験から学ぶ力」「学習の支援」も3つから成り立っている。イノベーティブ人材は何かを0から立ち上げる「起業経験」、複数の専門領域プロジェクトへのアサインするという「越境経験」を早期に経験していたのだ。もちろん、これらの経験をすれば、イノベーティブ人材が開発できるという関係ではない。複数の顕著な成果を介在して、成果の増幅を行った結果、イノベーション人材が誕生しているという因果関係だ。そして、イノベーティブ人材はほぼ間違いなく「経験から学ぶ力」が高いということが確認されている。そして、顕著な成果をあげるためには組織の「学習支援」が必要である。

イノベーティブ人材の誕生=複数の顕著な成果×成果の増幅

イノベーティブ人材を多く輩出している企業には人材の「経験学習」を支援する仕掛けが準備されている。「経験学習」とは、アメリカの教育理論家であり組織行動学者のデイビッド・A・コルブ氏が提唱した理論で、実際に経験したことをもとに具体的な振り返りを実施し、なぜ失敗したのか、あるいは成功したのかを分析し、考えて次に活かすことを指す。それらの企業が、私たちが実に80%以上が「経験学習プログラムEXPERIENCE」を導入している。なぜなら、従業員が経験したことを内省し、言語化し、次の機会につなげるという「経験学習」は簡単ではないからだ。

複数の顕著な成果=適切な経験×経験学習×組織の学習支援

内省することと反省することとは異なり、自分自身の考え、心の状態や行動などについて深く省みることを意味する。 「なぜ自分はそう思ったのか」「なぜそのような行動を自分がしたのか」と自分自身に問いかけて、思考や行動について分析することを指す。言語化は言葉で表現すればよいだけではなく、伝達可能にすることを指す。いずれも人材開発部が従業員に促してできるようなたやすいものではない。だからこそ、私たちはイノベーティブ人材を多く輩出している企業への「経験学習プログラムEXPERIENCE」を無償で提供しているのでダウンロードしてほしい。日本の企業からイノベーティブ人材を多く輩出することは日本経済の成長に不可欠だと考えるからだ。企業にとっては「経験学習プログラムOPEN」という仕掛けがイノベーティブ人材を偶発的に発掘するだけでなく、イノベーティブ人材を必然的に誕生させることができれば、企業の大きな成長につながることは言うまでもない。このようにイノベーティブ人材の顕著な成果は、良質な経験をし、そこからの経験から学び、それを支える支援により学習を加速させ、高度化させるような仕掛けがある場合に実現する。そして、イノベーティブ人材が現れても、それが多数にならない要因が次の公式で表される。いくらイノベーティブ人材を生み出しても、誤った対応を行えば、公募で1位になった人材が問題社員になった、社長賞を獲得した新人の活躍が続かない、出世頭と言われた従業員がローパフォーマーになるといった事象が多発する。その誤りは、まず「成果を発見」していないことから始まる。公募で選ばれた人材が、どれだけの血のにじむような努力しているのか、社長賞を獲得した新人や出世頭がどれだけの労力を仕事に費やしたが想像できるだろうか。その成果が上司や同僚数名が認知しているだけでは不足なのである。企業として成果を発見する仕組みが用意されていなければ、それは埋もれていってしまう。上司や同僚がその成果を奪って手柄にするような場合は、最悪の事態だが、それさえも見過ごされることが多い。「このような由々しき事態を看過してはならない」のである。

成果の増幅=成果の発見×成果の共有×リソース×脱線フェロー

次に必要なのは「成果の共有」だ。企業全体へと成果を拡散し、さらなる活躍のために当人にしかるべきリソースを提供する道を開く必要がある。イノベーティブ人材が多く輩出される企業にはアワード以外にもインフルエンサーなどに拡散させる仕組みが確認された。多くの人々から賞賛され、充分なリソースが提供され、その後の活躍イメージが湧いていれば当人はきっと次の成果に向けて踏み出していく。それを発見した人々は、それをロールモデルとして模倣し、挑戦する姿勢を見せるだろう。

最後に重要なのが「脱線フェロー」だ。これは、イノベーティブ人材の魅力が利用される事例が多く確認されている。例えばプレゼンテーション能力を人心掌握に利用するなどが典型だ。このような脱線に対して企業として対応しなければ、成果の増幅どころか悪行の増幅に加担しかねない。特に社内政治の強い日本企業においては、イノベーティブ人材を潰すこと、イノベーティブ人材の成果を奪うこと、イノベーティブ人材を悪用することが散見されてきた。

まとめ:

イノベーティブ人材を取り巻く環境、そこでのイノベーティブ人材創出メカニズムを解明してきた。今後、イノベーティブ人材という突出した人材をどのように守り、どのように向き合い、増やしていくかは日本企業にとって重要な成功要因となる。特に人材戦略においては、解決すべき課題でもある。「社員が一丸となって頑張ろう」「みんな平等にみんなで勝とう」「公平性を保ち、利潤を分配しよう」というような平和ボケした企業理念やバリューは成立しない時代となった。レガシーな慣習は一蹴し、変革が迫られている。いかにして世界の中で競争優位性を確保するのか、いかにしてイノベーションという大きな成果を生み出す人材を確保するのか、イノベーティブ人材を生み出す成功要因は何かが論点なのだ。


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