どのオープンイノベーションサービスを選ぶべきか
オープンイノベーションの曖昧さ
オープンイノベーションに関するイベントやコンテンツが増加傾向にあり、多くのオープンイノベーションサービスが乱立している中で、混乱も少なからずある。これはオープンイノベーションという言葉が曖昧なまま用いられていることと、その意義が理解されていないがためである。
先日、イェール大学アシスタント・プロフェッサー成田悠輔教授と「AUBA」株式会社eiicon代表取締役社長の中村 亜由子氏の対談が行われた。両者ともに内閣府主催の「日本オープンイノベーション大賞」を受賞しており、成田教授に至っては最高位の内閣総理大臣賞の受賞者である。しかし、その成田教授が中村 亜由子氏に対して「イノベーション」が「オープン」である意義について質問したところ、その方がオープンである方が効率的にスピーディにインパクトが大きいからという曖昧な回答をし、なぜ「オープン」であるかについては言語化されなかった。効率的にスピーディにインパクトが大きいというのは「オープン」である意義ではなく、「オープン」による効果性の列挙でしかなく、回答として物足りなさを感じる。成田教授はオープンイノベーションを理解しているが、敢えて視聴者の思考の整理のため、もしくは思考の整理のために「オープン」である意義について質問したのだろう。しかし、中村 亜由子氏から明確な回答はなされなかった。そこに日本のオープンイノベーションのリテラシーの低さを垣間見た瞬間であり、象徴的なものだった。
なぜオープンイノベーションが必然なのか
まず、ノベーションを起こす第一歩は、当然ながら、新しい知(アイデア)を生み出すこと。そのために必要なのは、「既存の知」と「既存の知」を組み合わせること。これは同時に人はゼロからは何も生み出せないということを意味している。イノベーションの父と呼ばれる経済学者ジョセフ・シュンペーターが80年以上前からNew Combination(新結合)という名で提唱していることで、今も変わらない原理の一つ。新しい知を生み出すには、既存の知と知を組み合わせる必要があり、これがイノベーションの意義である。
ところが、人間は認知に限界があるため、目の前の知だけを組み合わせる傾向がある。中でも大手企業の従業員は同じ業界、同じような組織に何十年も停滞している。すると、その何十年の間に目の前の知をさんざん組み合わせているから、もうそこでは知と知の新しい組み合わせが尽きており、だから新しい知が出てこないということになる。したがって重要になるのは、目の前ではなく、できるだけ遠くの知を幅広く探して、それらを様々に組み合わせることが必要となる。ここに「オープン」であることの意義がある。
オープンイノベーションサービスの種類
オープンイノベーションサービスは数多くあるが、4つに分類が可能だ。
- プラットフォーム型
- イントレプレナー型
- コンサルティング型
- アクセラレーション型
株式会社eiicon「AUBA」がプラットフォーム型として認知されてており、寡占状態である。アルファドライブ社のようなイントレプレナー型というのは、社内起業支援であり、大手企業の新規事業開発に不慣れな人々を支援するサービスである。小学校の先生が子ども達を遠足に連れていくように「こっちに行くからついておいで」と支援するイメージだ。コンサルティング型は従来通り、知見を持つ人材がアドバイスをするもの。アクセラレーション型はアクセラレーションプログラムを実行することを主眼をおいて支援をする。スタートアップや起業家に伴走し、事業成長を助けるパートナーを「アクセラレーター」と呼び、大手企業が「アクセラレーター」を担うのだが、その実績が乏しいため、その支援を外部に依頼するというわけだ。
オープンイノベーションサービスの種類
しかし、上の図のように従来のコンサルティング型もアクセラレーションプログラムも大きな費用が必要となる。イントレプレナー型は若干安価ではあるが、それでも1,000万円~2,000万円程度である。プラットフォーム型はメッセージのやりとりをする際にチケットを購入するシステムとなっており、やりとりが進むと高額になるというビジネスモデルだ。無料登録が謳い文句で気軽に登録するが、後々高額になるケースがあるので注意が必要だ。また、大手企業は年間で予算を確保するため、都度都度チケットを購入するような運用は極めて困難である。
結論
それらの企業が日本のオープンイノベーション業界の主要プレイヤーであるが、残念ながら成果は出ていないとみられる。それは、イントレプレナー型、アクセラレーション型は従来のコンサルティング型と同様に大手企業との契約を獲得すること主眼をおいたビジネスモデルだからだ。
近年、オープンイノベーション総合支援サービスというものが登場した。それは、プラットフォーム型、イントレプレナー型、コンサルティング型、アクセラレーション型のすべてを網羅するサービス範囲の広さが特徴だ。そして、コストが小さく、イノベーションの実現可能性は高い。
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