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サステナビリティ経営の課題


サステナビリティ経営の2つの課題

サステナビリティに必要な要素

サステナビリティ経営では、経営戦略のひとつである。社会や環境問題に対する認識変化を受けて、プロアクティブに対応する企業の姿勢が持続的可能性を向上する上で重要な要件になりつつある。日本企業の経営者は現状の財務危機を乗り越えることが前提ではあるが、環境や社会的課題に対してより厳しく世の中から見つめられる可能性が高いと言われている。つまり、企業には2種類のサステナビリティが求められている。ひとつは、想定外のリスクに対応できるだけの財務的なマネジメント、収益率を高めることである。もうひとつは、社会や環境への変化に迅速かつ感度高く対応できる組織と企業文化を構築すること。こうした2種類のサステナビリティを両立することが企業価値の創造となる。

  • 想定外のリスクに対応できるだけの財務的なマネジメント
  • 社会や環境への変化に迅速かつ感度高く対応できる組織と企業文化の構築

サステナビリティ経営に必要な視点

長期的な視点

サステナビリティ経営では、経営戦略のひとつであるが、サステナビリティ経営の大きな特徴に長期的な視点がある。サステナビリティ経営では環境や社会への配慮と企業利益の追求を両立することを目指すが、これは短期的な利益追求とは両立しえない。重要なのは、環境や社会への配慮と価値提供は経済的リターンの獲得と矛盾しないという考えの下、社会課題の本質的な解決に向けた企業経営を実践することである。言葉にすると簡単なように聞こえるが実践する段階で多くの企業が壁にぶち当たる。

  • 対象の課題
  • 時間軸の課題
  • 合理性の課題

まず、一つ目は対象の壁だ。経営理念の軸が顧客課題解決のままになっており、社会を含むステークホルダーになるを提供するのかが不明確な場合にサステナビリティ経営は実践は困難を極める。パーパスが示している対象が顧客のみとなっている企業は、パーパス自体の捉え直しが必要となる。次に時間軸の壁である。経営計画が短期的、短絡的になり、近視眼的に予算達成の話しかしない場合はサステナビリティ経営の実践が滞る。この場合、バックキャスティングで理想の未来シナリオを描き、長期ビジョンと現状からマテリアリティを策定していくプロセスを丁寧に踏んでいく必要がある。

そして、合理性の壁が立ちはだかる。社会課題が顧客課題に劣後し、経済合理性がとれないケースが多い。これでは元の木阿弥である。この場合、事業と社会貢献活動が両立され、融合され、ステークホルダーに確かな価値を提供するようにしなければならない。ここでは自社のステークホルダーへの提供価値が何かの明確化を求められる。パーパスを前提に価値創造モデルを描く必要がある。要素は経営資本、経営基盤、メガトレンド、マテリアリティ、コア・コンピタンス、提供価値、ステークホルダー、アウトプット、アウトカム、投資プロセスといったものが組み合わされることが望ましい。これらの壁を乗り越えれば、サステナビリティ経営の実践のスタートラインに立つことができる。

ステークホルダーの視点

サステナビリティ経営において、企業を取り巻くステークホルダーは投資家、従業員、サプライヤー、顧客、地域社会と多様化した。それらのステークホルダーと持続的に対話を重ねながら関係構築を図り、企業活動をすることが求められている。ハーバード大学のマイケル・ポーター教授はROE15%以上でないとCSV企業ではないと断言している。長期的に投資家が求めるリターンを上げることなくして、投資家以外のステークホルダーへのエンゲージメントを高めていくことは難しい。その意味においては、投資家が注視しているROEやROICいった経営指標は企業にとっても重要な指標となる。ESG経営の実践を主張するために、これらの指標を悪用するケースもあるが、そのような短絡的な経営はやがて化けの皮が剝がれるように業績を落としていく。経営指標をコントロールして株価を吊り上げるような企業は真っ先に市場から排除されるよう投資家は見張っているからだ。ESG経営とROE経営は高度に融合している企業もあり、日本経済新聞はROESG経営スコアを測定し、トップ100を公表した。日本企業の中では、花王、NTTドコモ、KDDI、日本たばこ産業が100以内に名を連ねている。


サステナビリティ経営と聞いて環境に関する経営方針だから、自社には関係がないと考えている方は、考えを改めなければならない。なざなら、サステナビリティ経営に関係のない企業など、世界にひとつもないからだ。そしてサステナビリティ経営とは社会貢献活動といったCSR、共通価値の創出といったCSVを超えて、一部内包しながら現在のすべての企業の要件となりつつある。サステナビリティ経営は単なる経営方針ではなく、経営戦略である。経営戦略とは「こうすることで勝ち残る」という姿勢であり、意志である。今後、投資家、従業員、サプライヤー、顧客、地域社会といったステークホルダーに選ばれ、社会に誇れる企業がどのようなものか、淘汰される企業はどこかを見届けてほしい。

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